自然音とスローテンポのインストルメンタル・ミュージックで心からリフレッシュしましょう。
母なる森」にからだをあずけ、無意識世界への扉を開け放とう
監修/解説:富田 隆(駒沢女子大学教授 心理学者)
「森」は心理学的に無意識世界の象徴であると同時に、生命を生み出す母親の象徴でもあります。遠い太古の時代から、人間は森によって育てられ、森の中に生活の糧を求め、そして森によって癒されてきました。
現代の都市生活は、容赦なく私たちの精神を傷つけ蝕みます。時に、そんな疲れた精神があちこちと彷徨った末に、最後にたどり着く場所の一つが巨大な森であるというのは、とても象徴的な現象であると言えるでしょう。つまりは、私たちの内なる自然が、外なる自然を求め、無意識のままに導かれて、母なる森の懐に帰る、ということなのです。
私自身もかつて、富士の麓に広がる樹海の底で、不思議な心の安らぎと懐かしさを体験したことがあります。事の是非はともかく、近年のアウトドアスポーツやキャンプなどの流行は、ストレス社会へのごく自然なリアクションなのです。
そして、母なる森は、私たちに安らぎと癒しを与えてくれるだけでなく、私たちが自己の内面に沈潜する機会をも与えてくれるのです。森は人を瞑想的に変えます。森の持つリラクセーション効果と鎮静効果、さらにソフトで適度な精神刺激作用、こうした総合的な環境条件が、私たち自身の無意識世界への扉を開けてくれるのです。あなたも、森の中で自分のイマジネーションが活性化されたのを感じたことがあるはずです。あなた自身の個人的無意識や集合意識が生み出したものは、しばしば、外的な現象として体験することがあります。
たとえば、森の民であった古代ケルト人たちの神話に登場する様々な妖精は、彼らの集合無意識が生み出した影のような存在と考えることもできます。それはまた、現代の子供たちが愛する森のおばけ「トトロ」にもどこかで通底するものであり、さらに遠く、私たち日本人のルーツである縄文文化までさかのぼることができるはずです。森を敬い、そこに神が宿っていると信じていた縄文人たちは、ある意味で物事の本質を見抜いていたわけです。
このように、森は私たちの無意識を開放してくれる場所であり、内なる可能性を引き出し、精神に自由を与えてくれる場所でもあるのです。森林浴を体験した時の、あの爽快感と安らぎの背景には、美味しい空気ばかりでなく、このような心理的な仕組みも隠されていました。
このCDは、音楽と音響の両面から、総合的に森を「体験」していただくために作られました。あなたも、母なる森の懐に肉体をあずけ、どうぞ安心して、自由に精神を解き放って下さい。